ENGINEERING
プラズマの周囲にある多機能の壁
ブランケットは、プラズマの周囲に置く機器です。日常語の毛布を思わせますが、単に熱を逃がさないための断熱材ではありません。将来のD-T発電炉で研究される増殖ブランケットには、中性子のエネルギーを熱として回収する、外側の機器を放射線から守る、トリチウムを作る、という重要な役割があります。
中性子を熱と燃料づくりに生かす
D-T反応で生まれる中性子は電荷を持たないため、プラズマを閉じ込める磁場では止まりません。周囲の材料と反応したり衝突したりしてエネルギーを渡します。ブランケットに冷却材を流し、その熱を取り出して発電設備へ運ぶのが基本的な構想です。
さらに、中性子をリチウムと反応させると、燃料に使えるトリチウムを生み出せます。これを燃料の「増殖」と呼びます。リチウム自体をプラズマへ直接入れることと、リチウムを使ってトリチウムを作ることは、別の工程です。
作れば、そのまま使えるわけではない
トリチウムは自然界にまとまった量がほとんどありません。多くのD-T発電炉を動かすには、炉で使った分を補う燃料サイクルが重要です。ブランケット内で作るだけでなく、取り出し、精製し、安全に運び、再び燃料として供給するまでをつなぐ必要があります。
架空の計算例で、運転に100単位のトリチウムが必要なのに、ブランケットから使える形で戻った量が90単位なら、10単位をほかから補う必要があります。生成した総量だけで判断せず、回収の遅れ、装置内に残る量、損失も確かめます。この数値は実機の性能ではありません。
ITERで試すこと、将来の炉で目指すこと
ITERの主要なブランケットは、遮蔽と熱の除去を担います。それとは別に、テストブランケットモジュール(TBM)という試験機器でトリチウム増殖の技術を調べる計画です。ITERが自分の燃料をすべて賄うことを実証済み、という意味ではありません。
丈夫さ、熱の取り出しやすさ、燃料を作れる量は相互に関係します。厚い構造材を増やせば、燃料増殖に使える空間が減ることもあります。部品の性能を一つずつ高めるだけでなく、全体で両立させる設計が求められます。
確認問題
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参考資料
- ITER:Blanket 確認:2026-10-08
ITERブランケットの遮蔽・熱除去と試験モジュールの区別。
- ITER:Tritium Breeding 確認:2026-10-08
リチウムからのトリチウム生成、回収と自己充足の研究課題。
- QST:核融合エネルギーの発電実証に向けた原型炉の基本概念を明確化 確認:2026-10-08
2019年の概念設計資料。構造材と燃料増殖の両立のみ参照し、古い予定年や出力は現行計画として使用しない。
出典の発行機関による監修・推薦を意味しません。